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テニス部レギュラー3年生に質問です。 あなたは、さんを知っていますか? ■跡部景吾の答え■ 「とは同じクラスなんだから、知ってるに決まってんだろ。 あー……そうはいっても、必要最低限の会話しか、したことねえな。 正直、どんな奴なのかは、よくわからねえ。そんな程度で、あいつの内面を推し量れってのは、ちょっと無理があるだろ。まあ、あえて言うなら、可もなく不可もなくってところか。 そもそも学校でのあいつは、大抵寝てるか本読んでるかの、どっちかだしな。 読書好きなら真面目なのかと思いきや、たまに本の前で、妙ににやけたツラしてやがる。 あいつ一体、どんな本読んでんだろーな? さすがに、時々気になるんだよ」 あの子の愛読書は、ズバリ、BL小説よ。 ブックカバーで表紙が隠されてなきゃ、学校では読めない本ね。 いやいや、いくら正面を隠してたって、後ろから覗かれて、そこがもしヤバいシーンの挿絵とか入ってるページだったらマジでどうすんだろ? あの跡部が気になるくらい、おかしな顔してるんなら、一度きちんと注意しておいた方がよさそうね。 それにしても、あの子もよく、そんな危険物を学校に持ってこれるわよね。 同人バラされる度胸はないくせに、変な度胸はあるんだから……。 でもこれは、の最低限の名誉のためにも、黙っておいてあげなきゃ。 まあ……わたしも時々、借りてることだし。 ■忍足侑士の答え■ 「さん? うーん、名前は一応知っとるけど、一度も同じクラスになったことあらへんし……。 接点自体が、まずないねん。せやから知ってることなんて、とよくつるんどるってことくらいやな。 あと、図書室でよく見かけるから、本好きの真面目な子かなーとは思っとったけど。 ……まあ、俺から言えるのはそんなところか」 あの子は、普通の本も好きだからね。 けど、跡部もおっしーも、本好きは真面目ってのは、ちょっと安直すぎない? 一概に本と言っても、いろいろあるのよ。そりゃもういろいろ。本当にいろいろ。 もっとも、普通の本を読んでたって、はやっぱりだけどね。 だって「走れメロス」を読みながら、「メロスとセリヌンティウスなら、やっぱりメロスが攻だと思う」とか、普通の人にはわからない感想を言っちゃう子だから。 ……それの意味がわかっちゃう上、「理不尽な死が迫りつつも、強い心で静かにメロスを待ち続けたセリヌンティウスの方が攻にふさわしいわ」なんて言って、と大ゲンカしたわたしも、どうよって感じだけど。 ■向日岳人の答え■ 「とは2年の時、同じクラスだったぜ。仲良いってほどでもないけど、結構しゃべったかな。 あいつ、勉強はそこそこできるくせに、変なとこでとちったりして、案外おっちょこちょいなんだよ。 えーっと、確か……国語のテストで、「攻」の反意語を答えよってヤツ。俺でも正解したのに、あいつ、その問題だけ間違えて、100点逃したんだ。 あの時の、のリアクションがすごくてさー。だから俺、未だに覚えてんだよ」 ……それ、わたしも間違えたからよく知ってるわ。 そうよね、「攻」の反意語は「受」じゃなくて「防」よね。がっくんにだってわかる、簡単な答えよね。 あの子もあの時のテストでは、かなりの手応えを掴んで、100点間違いなしって言ってたのよ。 ところが、返ってきた答案用紙を見れば、自信満々で書いた答えが、よりにもよって、あんな間違いしてたんだから、そりゃリアクションもおかしくなるって。 余談だけど、わたしのクラスでは、この問題をこんなふうに間違えたの、わたしの他に4人いたわね。みんなあの問題には、本当に泣かされたみたいよ。 ■宍戸亮の答え■ 「とは、1年の時に同じクラスになったぜ。委員会も同じで、一緒にいることが多かったから、よくしゃべってたな。お互い、部活のこととか話したもんだぜ。 あいつ、あの頃、柔道部のマネージャーだったろ? 手首捻っちまって、部活行く前に教室で、まだ慣れないテーピングに悪戦苦闘してたら、「そういうの慣れてるから」って、手伝ってくれたんだよ。マジで助かったぜ。 でも結局、は柔道部を1年で辞めちまったんだよな。特に問題があるように見えなかったから、なんでなのか、ちょっと気になってたんだよ」 それはね、あの子が柔道部マネージャーになるきっかけを作った、3年生の素敵な先輩たちがいなくなっちゃったからよ。あ、素敵っていっても、恋愛感情とかは見事に皆無だから。 柔道って、何かゴツいイメージがあるじゃない。けど、全く逆タイプの人も結構いるわけ。 そうした先輩たちに部活の勧誘されて、「一度見学に来ない?」って言われて行ってみたら……これが結構よかったらしいのね。 だって素敵な先輩たちが、寝技の練習で、くんずほぐれつアヤしく絡み合って……っとと、失礼。 まあ、腐女子にはたまんない光景だったようでさ。でも、こんなこと真面目に柔道やってる人に知られたら、絶対怒られるわよね。 で、あの子は不純な光景見たさに柔道部に入ったから、先輩たちがいなくなって、気が抜けちゃったみたい。 もっとも、それだけが理由で辞めたりなんかしないわよ。あの動機からは想像つかないけど、結構真面目にマネージャーやってたから、柔道部に思い入れもできたって言ってたし。 ただ、当時の1〜2年生は、3年生より熱意がなかったようで、練習もダレてきたから、それでやる気をなくしちゃったんでしょうね。だから、わざわざ心配するほどのことでもないのよ。 ■芥川慈郎の答え■ 「ちゃん〜? うん、知ってるよ。時々保健室で一緒になるからさ。 ああ、別にどっか悪いとかそーゆーんじゃなくて、何となく、ベッドで寝たい時とかに行くんだよ。そうすると、結構会うんだよね、ちゃんと。 「眠い時は保健室にかぎるわ〜」って言ってたけど、保健室以外にも気持ちよく眠れる場所って、たくさんあるんだよ。だから時々、俺のお気に入り昼寝スポットに行って、一緒に寝てるんだー♪ たまーに膝枕もしてくれるし、ちゃんていい人だよね〜。 そんなわけで、俺たちってば仲良C!」 ジロちゃん、保健室の使い方間違ってる。 はしょっちゅう夜更かしして、ビデオや深夜アニメ見たりゲームやったりしてるから、睡眠不足で、頭痛がひどい時があるらしいの。けど大半は、フツーに眠いだけなのよね。 そんなわけで、わりと保健室のお世話になってるのは知ってたけど、まさかそこで、ジロちゃんと友情を育んでいたとは……。 っていうか、膝枕? 2人ってば、いつの間にそこまでの関係に――ってのは、取り越し苦労ね。 ジロちゃんは、ポワポワしててかわいくって、なんていうかこう……母性本能をくすぐるっていうの? そんな感じなのよね。 それにあの子ってば、こっちが座ってる時に、いきなり膝の上に頭乗っけてきて、そのまま熟睡することがあるから、きっともそのパターンだと思うわ。 少なくとも、生徒手帳に大好きキャラのラミネートカードを入れて、日々眺めてるあの子が、生身の男に易々と惚れるはずがないし。 ジロちゃんもに惚れてたら、「いい人」なんて言わないでしょうよ。 さてと、これで一通り聞き終わったわね。 わたしは、親友のに、ごっそり抜けてしまったテニス部マネージャーの穴を埋めてもらいたいと思ってるの。それでまず、同学年のみんなに、のことを聞いてみたわけ。 幸いなことに、宍戸が柔道部マネージャー時代のを知っててくれたおかげで、いかにあの子が現状にふさわしい人物か、みんなもわかってくれたみたい。 やっぱり、テーピング技能を持ってるってのは大きいわね。 いろいろあったせいか、「今さら新しいマネージャーだと?」って、むちゃくちゃ渋い顔してた跡部も、それでちょっと、考えを変えつつあるようだし。 タオルやドリンクの用意ってのは、気軽に手伝ってもらえるけど(まあ部員の数が多いから、それだけの作業も、結構大変だけどね)、ケガした時の対応ができる人ってのは限られてる。 うちのテニス部にしても、きちんとテーピングできる人間が、どれだけいるか……。 ああいうのは、必要に迫られた時に、初めて覚える人が多いからね。 もっとも、そういう時のためのマネージャーではあるんだけど、何から何まであてにされても、正直困る。 まあ、レギュラー辺りはそれなりにできるだろうけど、慣れてない一般部員のケガが続出して、わたし1人じゃ手が足りないって時に、レギュラーに練習の手を止めさせて、治療に当たらせるわけにはいかないもんね。 「新しいマネージャーなんかいらねえよ」って態度だった跡部の表情が、少しずつほぐれてきたのがわかる。 みんなが全く知らない相手じゃないってのも、大きいわよね。 まあ、その辺りの反応には個人差があったけど、みんなから、おおむね好意的な印象を持たれてたのは、かなりの決定打だと思う。 太郎ちゃんは、「新しいマネージャーの選抜はおまえたちにまかせる」って言ってたから、最終的に跡部がOKと言えば、それですべてが決まる。 そう、すべての決定権は、跡部にあるのだ。 そして跡部は―― 「……。鬼みてえなツラで、こっち見てんじゃねえ」 親友に救いを求めるわたしの心に打たれ、跡部はをマネージャーに迎えることを、快く認めてくれました。 「……すっげー、」 「俺、跡部がメンチのきり合いで負けんの、初めて見た」 うるさいわよ、宍戸にがっくん。わたしはメンチなんかきってません。 跡部は親友に救いを求める、わたしの心に打たれたんです。 「それより、。これからがマネージャーになるのはいいとして、自身は、それをOKしたのかよ?」 「……するわよ、きっと」 「おいおい、まさか肝心の抜きで、話を進めてたわけ!?」 だからうるさいって、宍戸にがっくん。 「これから説得するからさ。みんなは暖かく、を迎え入れてくれればいいの」 みんなは、「ほんとに大丈夫か?」って顔でわたしを見てたけど、ここまでいい感じに仕上がった話を、わざわざ潰すわけないじゃない。 そんなわけでその翌日、いい笑顔のわたしとは裏腹に、ものすごーく不本意そうな顔をした親友は、テニス部のみんなに、申し訳なさそうに迎え入れられました。 ……まあ結局、説得というか、脅迫してテニス部マネージャーに引き込んだわけだけど。 でも、もう一度、部活動に励むのも悪くないと思うよ、うん。 っていうか、絶対に楽しいって! そんなわけで、これから一緒に頑張ろう♪ ねっ、。 −END−
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