17.深夜のコンビニ



 プリンが欲しい。
 なのに、プリンがない。

 ……まあ、ないならないで、しょうがないか。





 ――なんて、あっさりあきらめられるわけもなく、つい近くのコンビニまで足を向けてしまった。
 そして、いそいそと目当てのプリンを手にした瞬間、背後からかけられる失礼な声。


「夜中に食ったら太るぞ」
「……ご挨拶ですね、跡部くん。まさか、こんな時間にコンビニで会うとは思わなかったよ」


 そう、いきなり声をかけられたことより、あの跡部がコンビニにいることの方に驚いた。


「シャー芯買いに来たんだよ。チッ、俺様ともあろう者が、ストックの確認を怠るとはな」


 まあ、そういう時もあるよ。人間だもの。

 でも、わざわざ今買いに来たってことは、これからシャー芯を使う作業……つまりは勉強でもするのかな?
 すごい、さすがは跡部様! これがわたしなら、明日購買で買えばいいやーって、そのまま何もせず終了だよ。


「で、おまえは? これから、それ食って太るのか?」
「失礼だな、さっきから! これは崇高な実験です!」


 ……まあ、食べることに変わりないから、脂肪は蓄積するけどさ。
 そして跡部は、わたしをからかう態勢のまま、話を促していく。


「崇高な実験ね……。で、具体的に何するんだよ?」
「プリンに醤油をかけたら、本当にウニの味になるのかどうかよ」
「は!?」


 そう言った途端、わたしをからかっていた跡部の表情が、豪快に引きつった。
 っていうか、ものすごいドン引きしてるけど……そんなにダメかな、醤油プリン。


 そりゃ、お金持ちには邪道な発想かもしれない。
 けど、さっきまでやってた旅番組で、海の幸のありとあらゆる映像を見せつけられて、猛烈に胃が寂しがってるのよ。同じものが欲しいって。
 そんな無茶ぶりを叶えてくれる、庶民の家でてっとり早く用意できる海鮮ものと言えば、以前向日がおしえてくれた、このウニもどきしかないんだもの。


 でも跡部は、わたしのやろうとしていることに、本気で理解に苦しんでいた。


「……おまえ、本気で言ってんのか?」
「本気ですけど?」
「しかもそれは、夜中にわざわざプリンを買ってまで、やりたいことなのか?」
「いや、別にわたしは、プリンに醤油をかけたいわけじゃなくて、ただウニの味を楽しみたいと……」
「ありえねえ! ウニの味はウニのものだろ! プリンと醤油で、どうこうできるものじゃねえ!」


 うわ、ものすごい拒絶反応。
 そりゃ本物のウニがあれば、わざわざ今プリンを買わないし、醤油だってかけないよ。


 でも、庶民の知恵に衝撃を受けている跡部の姿は、見ていてちょっと面白かった。

−END−


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2016.02.05



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