07.おごって?



 プリンに醤油をかけてウニの代用にしようとしたら、あの跡部に本気で怒られた。っていうか、慄かれた。
 なまじ、本物で培った味覚に優れた舌を持つだけに、こうした紛い物はダメなのかもしれない。

 でも、自分が受けつけないからって、人にまでグチグチ言うのはどうかと思うよ。


「大体、醤油プリンってなんだよ。意味わかんねえ。そんなことしようとするヤツの頭も意味わかんねえ」
「わかんないならわかんなくていいです。そういうことなんで、わたしはプリンを買って帰ります」
「……意味わかんねえ!」


 なんなのよ、もう!
 今にも地団太踏みそうに、嫌だってことを全力で主張する跡部は面白いと思うけど、今においてはうっとおしさしか感じない。


「うるさいなあ! うちはウニが食べたいと思った時に、すぐ食べられるような家じゃないの。そんなにわたしが醤油プリンするのが気に入らないなら、それをしなくてすむように、新鮮なウニを食べさせろ!」


 なんで俺が、そんなことしなきゃならねえんだよ――この後に来るのは、絶対こうした憎まれ口だと思ったのに。


「よし、わかった。なら、本物の味をおまえにおしえてやる。日曜11時に迎えに行くから、首を洗って待っていろ!」


 なのに跡部は、そう言うや否や、颯爽とこの場を立ち去っていった。


 ……あれ?
 首を洗って待っていろって……なんだか、ものすごく殺気立ったお誘いを受けてしまった。


 そして日曜日、なぜか招き入れられた跡部邸で、豪勢なごちそうをいただくことに。
 跡部は、そりゃもうご機嫌な様子で、


「どうだ、これが本物の味だ。醤油プリンとなんざ、比べるべくもねえだろう」
「えーっと……」


 ウニなんて目じゃないくらい、様々な高級食材に囲まれた食卓。
 でもわたしは、言葉に窮してしまった。

 ごめん、跡部。正直、すごすぎてよくわからないよ。


「……わたしには、醤油プリンの方が合ってるかも」
「ああ!?」


 素直にそう答えたら、自慢の昼食に舌鼓を打っていた跡部に、思いっきり睨まれた。
 だから、ごめんって言ってるじゃん!


「でも、醤油プリンだって、捨てたもんじゃないんだよ。これも結構奥が深くて、醤油をかける前にカラメルソースを取る派と、そのまま派がいるんだって。ちなみにわたしは取る派」
「うるせえ。ウニが気に入らねえなら、そこの生ハムメロンでも食ってろ」
「あ、メロンといえば、キュウリにハチミツをかけたらメロンの味になるって、宍戸が言ってたよ」
「――ありえねえ!」


 苦々しい顔をしながら、やっぱり今日も、跡部は庶民の知恵に衝撃を受けていた。

−END−


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2016.02.05



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