04.貰い物



 どういうわけか、今年は非常に台風が多い。
 幸いここら辺は大した被害がなかったけど、それでも尋常じゃないパワーの雨風は、大自然の脅威を我々人類にこれでもかと見せつけた。

 とはいえ、現代に生きるわたしたち学生にとっては、こうした台風の来訪が実は嬉しかったりする。
 なぜかって? そんなの警報が出れば、学校が休みになってくれるからに決まってるじゃない♪
 あー、ウキウキでこんなこと言ってると、台風が深刻な被害をもたらした地域の方々に怒られるかもしれないな。……でも、嬉しいものは嬉しいのよ!

 そして先日過ぎ去ったばかりにも関わらず、今日もまた、新たな台風が日本列島にやって来た。
 それゆえ、台風情報を逐一チェックしつつ、いつものように登校。
 でも、これから台風接近のピークになるらしく、その影響で今日は桁外れに風が強かった。

 これだけ風が強いと、いずれ警報が出るんじゃないか――そんな期待に生徒たちは始終ざわめき、今日はさっぱり授業にならない。
 そして3時間目のさなか、ついにみんなが待ち望んだ暴風警報が発令された。
 ええ、もちろん学校は、これで終了ですとも。


「いやー、学校が3時間目で終わるなんて、ラッキーね♪」
「何がラッキーだ。警報出てんだぞ」


 中途半端な時間に帰ることになったせいで、いつもは決まった時間に来てくれるお迎えを、わざわざ呼ばなきゃならなくなり、跡部はとっても不機嫌です。
 でも、そんな彼と一緒に昇降口まで出たわたしは、音を立てて吹き荒ぶ風を前に、とってもご満悦なのです。


「でも、警報って言っても、ちょっと風が強いだけじゃん。出かけようと思えば、出かけられるわけだしさ」
「何がちょっとだ。どうせおまえみたいにお気楽なヤツは、飛んできた看板に頭ぶつけて、打ち所を悪くてして死ぬのがオチなんだよ」
「何てイヤな未来予想図を描くのよ!」


 そりゃ警報が出るほどの強い風なんだから、普段は飛びそうもない、危険なものが飛んでくる可能性はあるけどさ。


「だからって、このまますんなり家に帰るのもつまら――うひゃあ!?」


 そんな時に、いきなり吹きつけてきた強い風。
 その風はわたしの言葉を遮るだけではとどまらず、あろうことか派手にスカートをめくり上げた。

 あまりに突然のことで、慌ててスカートを押さえたものの、すべては後の祭り。
 そして、隣にいた跡部に視線を移し、恐る恐る気になる点を訊ねてみる。


「……見た?」
「つーか、見えた」


 そう、派手にスカートがめくれたということは、勢いよくその中身をさらけ出したというわけで。
 不可抗力ではあるものの、わたしは跡部の目の前で、己のパンツをこれでもかというほど見せつけてしまいました。


「見たのね、エッチ!」
「見えたもんはしょうがねえだろ」


 うわ、ほんとにつまんねえもん見たって顔してる、この人。
 乙女のパンツを目の当たりにした青少年として、それってどうなの?
 ……いや、全く逆に、食い入るように見られても、それはそれで怖いんだけど。

 でも、起きてしまったことを、今さら悔やんでもしょうがない。
 とはいえ、わたしにしてみたら、これは猛烈に恥ずかしい出来事だ。
 だからこの話は、これで終わりにしてほしかった。
 なのに、跡部のヤツときたら、


「おまえって、いつもそんなパンツはいてんの?」


 ま、真顔で何てこと聞くの、この男は!
 第一、もういいのよ、パンツの話は!


「わたしがどんなパンツはいてようと、あんたに関係ないでしょ!?」
「どうせなら、もっと見応えのあるもんはきゃいいのに」
「うるさいわね。あんたに見せるために、はいてるんじゃないわよ!」
「でも今時、あんなダセー花柄じゃなあ……。どうせ3枚で1000円とか、そういうのだろ」


 バカにしたように、鼻で笑いながら言う跡部。
 けど、その発言にはこっちが呆れる。
 3枚で1000円? んなわけないでしょ。わたしは胸を張りながら、


「ふーんだ、違いますー。24枚組の3290円よ。1枚あたり137円なんだから」
「うわー……」
「うわーって何よ! 今は通販で、お得な商品がたっくさんあるんだから!」


 そりゃ中には、イマイチなデザインのも若干混じってるけど。
 でも、安くてそれなりにかわいいパンツがたくさん手に入るなら、それに越したことはないじゃない。
 けど跡部からすれば、こうしたパンツは不満の塊のようで、


「もうちょい、下着にこだわるような女になった方がいいんじゃねえ?」
「大きなお世話!」
「第一、そんなパンツを見せられる男の身にもなれっての」
「そうですか! こんなパンツを見せて、すいませんでしたね! でも、もう二度と見せることもありませんので、お許しいただけると幸いですわっ!」


 何で、ちょっとデザインがイマイチなパンツをはいてただけで、文句言われなきゃいけないの。
 けれど跡部は、もう口もききたくないとばかりに憤慨するわたしを、しげしげと見ながら、


「二度と、ねえ……」
「な、何よ」
「別に」


 そんな会話を繰り広げた後日、どういうわけか、跡部氏からシルクのパンツが贈られてきました。

 えっと、私はこれをはくべき……なのかな?
 男性が女性に服を贈るのはそれを脱がすためだという話を聞いたことがあるんですが、つまり跡部氏はわたしのパンツを脱がしたいと、そういうことなわけですか? それともわたしの考えすぎ?

 でも、さらに後日、跡部と彼氏彼女という、より親密な間柄になったわたしは、初めての時にいちごパンツをはいていって、とっても怒られてしまいました。
 ……やっぱり脱がせたかったらしい。

−END−


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2004.09.25



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