03.テスト前



 学業優先のために部活が休みになってしまうのは、テスト前にはよくあること。
 でも、いつもなら放課後すぐに部活だから、いきなりそれがなくなっちゃうと、時間の感覚がおかしくなるのよね。
 そのせいか、1日の授業が終わってみんなが帰り始めても、こんなに早く帰ることがないから、つい何となく居残ってしまう。これも一種の、習慣病ってヤツなのかしら。


「いつまでダラダラしている気だ、おまえは」


 けどそんなわたしを見て、クラスメイト兼部活仲間の手塚は、あからさまに眉間に皺を寄せた。

 生徒会関連のプリントをまとめていた多忙な手塚は、わたしと違って、真の居残りだ。
 けど、その仕事も無事に終わったみたい。まあ、終わったからこそ、わたしに文句を言い始めたんだけど。


「別に、好きでダラダラしてるわけじゃないもーん。あーあ、何でテスト前って、部活がなくなるんだろうねー」
「それは、ただでさえ勉強しないおまえみたいな輩が、部活を口実に、ますます何もしなくなるからだ」
「……ハッキリ言ってくれるわね、手塚。でも、部活を口実にってのは心外! テストなんて関係なしに、わたしは部活をちゃんとやるわよ!」
「悪かった。なら、そこは訂正しておこう。だがそれだけの熱意を、なぜ束の間のテストに向けられないんだ?」
「向けられるなら、今ここで愚痴ったりしないよー」
「だからといって、赤点は許さんぞ」
「いいじゃん、別にー」
「追試で部活に影響を及ぼすような真似は、言語道断だ」


 そして手塚は、なぜかいきなり教科書を取り出した。


「せっかくだから、今の時間を有効に使え。少しなら俺が教えてやる。わからないところを言ってみろ」
「……へ?」
「部活でおまえの姿が見えないと、やはりおかしな気がするんでな」


 えーと……とても嬉しいことを言われたように思うんだけど、追試確定のような物言いは、実は大変失礼なのじゃないのでしょうか。

 とはいえ、嬉しいことには変わりないし、やはりテスト前の貴重な時間は有意義に使いたいので、手塚に従って、教科書を広げることにする。

 でも、「わからないところがわかりません」と正直に言ったら、幕を開けようとした勉強会は、たちまち説教部屋に早変わりしてしまった。


「何よ! わからないとこを言えって言ったのは、手塚じゃん!」
「だからって、わからん部分がわからないんじゃ、教えようがないだろう!」


 ごもっとも。

 でも、もとを正せば、テストなんてものがあるからいけないんだわ。
 それを口にしたら、そんなのはただの現実逃避だって、また手塚に怒られるだけだから言わないけどさ。

 ああもうっ、やっぱりテストなんて大っ嫌いだ!

−END−


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2004.09.11



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