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「が真田くんや仁王くんと仲が良いなんて意外だなー。っていうか、思ってもみなかった」 「う、うん。よく言われる」 「2人とも名前は聞くけど、よく知らないや。でもの友達なら、話せば気が合うのかも。ところで、どんなふうに仲良くなったの? 全然想像つかないんだけど」 いろんな意味で有名人な2人と友達だなんていきなり言われても、逆に不審がられるのでは。 そう思ってたけど、ありえなさ過ぎるせいで、かえって興味を持たれたみたい。 「ど、どんなふうにって、仁王は去年同じクラスで、真田は今同じクラスで、それでテニス部の絆が2人を繋いで……」 でも思った以上に興味を持たれて、反対にこっちがしどろもどろになってしまった。 まだ大ざっぱな設定しか決まってないから、わたしが彼らとどうやって友情を育んだかなんて、全然考えてなかったよ。 仁王監督、この後どうしたらいいんですかー!? 「感謝するぞ、! おまえが仲間になってくれて、本当によかった!」 「いや、まだ4人で出かけるのをOKしてくれただけだからね。真田くん的には、これからが勝負だよ」 「う、うむ。そうだな」 輝かんばかりの笑顔が一転、緊張に引き締まる。 いやー、恋ってすごいな。あの真田くんが、こんなにもテンションの振り幅激しいんだもん。 あの後、ボロが出ることもなく……いや、出まくったボロをが気にすることもなく、4人で遊びに行くことにOKをもらえた。 「まずは第一段階クリアってことで、今度はWデートの計画に移るなり」 「「Wデート!?」」 その単語に、わたしと真田くんの叫びが重なる。 Wデートはダブルでのデートということで……つまりデートするの? わたしも? 驚くわたしたちに、仁王くんは何を今さらと言わんばかりの呆れた様子で、 「2組の男女が一緒に出かければ、Wデートじゃろ」 「いや、でもつき合ってないし」 「ああ。つき合えたらとは思うが、今はまだそういう関係ではない」 「そこにこだわると話が進まんし、便宜上、Wデートと言わせてもらうぜよ」 そこから、Wデート作戦会議が開かれた。まあ作戦会議も何も、まずは4人で出かけて、真田くんとに繋ぎをつけるだけの話なんだけど。 さすがに1回目で、いきなり2人をくっつけようってことにはならなかった。 そりゃ知らない人を紹介された挙句、突然その人につき合おうって言われても、「無理」ってバッサリいかれる可能性大だからね。 まずは初回デートをうまくやり遂げて、真田くんと過ごす時間も悪くないって思わせるところから始めないと。そして次のデートの約束ができるように持っていくのが、今回の狙いだった。 仁王くんの提示するそんな作戦に、わたしと真田くんはひたすら「なるほど」と頷くばかり。 思ってたより長期的な計画になりそうだけど、の負担にはならなそうで安心した。 そうして安心したところで、気づき始めたことがある。 これ、わざわざ3人で集まって会議しなくても、最初から仁王くんにすべて任せた方が、早く進まないかな? そんなことを考えて、会議から心が離れかけた時、ふと仁王くんの視線を感じた。 「ところで、は誕生日いつじゃ?」 「へ?」 「誕生日」 なんの脈絡もなく投げられた質問に、心底ポカンとする。 そして警戒。なんだろう、この人。わけわかんない。 会議の折、合間合間に何度か唐突な質問が飛んできた。 それは誕生日・血液型・好きな食べ物・得意科目などの、ささやかだけど個人的なこと。 聞かれて困ることでもないから、一応ちゃんと答えたけど、でもなんか変な感じ。 そんな問いかけに困り果て、救いを求めるように真田くんを見る。 それを受けて、「不躾だぞ、仁王」と注意する真田くんに、「相手のことをより詳しく知るために、どうしたらいいかを実践しているところじゃ。よく見ておきんしゃい」と、しれっと答える仁王くん。真田くん、そこで「う、うむ」と頷いてしまった。 ちょっと待って。今ので納得できちゃうの? そりゃ、仁王くんの言うこともわからなくはないけど、でも何かおかしいよ。 まさか真田くん、恋心に惑わされているのをいいことに、仁王くんに遊ばれているだけなんじゃ……? なんだか変な引っかかりを残したまま、けれどWデートの予定は着実に決められていった。 今わたしは、奇跡の光景を見ています。 「頑張ったね、真田くん……!」 「こうも綺麗にまとまるとは、正直、予想せんかった」 あれからWデートを幾度か重ねた結果、何やら奇跡にも等しい化学変化が起きて、と真田くんが、無事つき合うことになりました。 2人がそれなりにまとまり、お気に入りの中庭のベンチで一緒に過ごす光景、それが今、わたしと仁王くんの目の前に広がっている。 2人の間には、もどかしさを感じさせる微妙な隙間があるけれど、それもまた味わい深い。 もう少し時間がたてば、縁側で茶を啜ってそうな趣のある、渋いカップルになるだろう。 けれど大満足のわたしと違い、仁王くんは物足りなさげな顔を見せる。 「しかしあの2人は、おとなしすぎやせんか。もう一押し二押しした方がいいかもしれん。次はどこに出かけるかの」 「……それなんだけどさあ。もうわたしたちは、出しゃばらなくていいんじゃないかな?」 と真田くんが2人での時間を無理なく過ごせるようになってからも、Wデートと称して、仁王くんは誘いに来た。 最初のうちは素直に同行してたけど、ここまで頻繁だと、かえって気がひけるんだよね。 最初こそ2人きりにしておくのは心配だったけど、このままずっとくっついてたら、逆に2人のペースを崩してしまう。 それにずっと見てきて、真田くんなら大事な友達を任せられると思ったし、何よりも彼に好意を抱いているようだから、邪魔する真似はしたくない。 「もうわたしたちの役目は終わったよ。後は2人に任せよう」 わたしの発言に、しばし唖然とした表情を見せる仁王くん。やがて大きなため息をつき、 「……ちと慎重になりすぎたか」 「そうだよ。余計なことせず、静かに2人を見守ろう」 最初の頃の真田くんを思えば、確かにどうなることかと思ったよね。でも、これから先はもう大丈夫だよ。 しかしそう言うわたしの前で、首を横に振る仁王くん。 「そういう意味じゃなくてな」 じゃあ、どういう意味? と思った時には、今までにない近さで仁王くんと向き合っていた。 え、何!? 一気に距離を詰められた驚きで固まっていると、 「将を射んと欲すればまず馬からと言うじゃろ?」 そんな彼の言葉の意味は、すぐにはわからなかった。 なんでいきなりわたしの手を握るんだろうって、そんな疑問でいっぱいだったから。 そうして固まっている間に、彼は指まで絡めて、しっかりとわたしの手を捉えていた。 思いがけない事態に見舞われると、人って動けないものなんだなあって、どこか他人事のように考える。 「え、あの……?」 「が欲しかった。でも大した接点のないおまえさんを手に入れるには、どうすればいいと思う?」 「――それって!?」 聞いたことのある問題。それどころか、これまで深く関わっていた問題だ。 「という将を確実に得るため、まずはという馬から落としたかった。ちょうど真田がに惚れとったからな。あの2人を結びつけようとすれば、うまいこと、との絆も確保できると踏んだんじゃ」 「あの2人を利用したの?」 「悪意のある言い方じゃのう」 遺憾であると言いたげに、表情を歪める仁王くん。 「も知っとると思うが、片想いの頃の真田は、笑えるレベルを突き抜けるポンコツぶりじゃった。あれでは使い物にならんから、なんとかせねばとなったはいいが、俺がまさかの真田係じゃ。真面目につき合って疲れるくらいなら、真田の願いを叶えるついでに、俺の役に立ってもらうくらいはいいじゃろう?」 た、確かに、あの頃の真田くんは酷かった。あれにつき合うことを思えば、少し自分の役に立ってもらうくらいのことは……。 でもそう考えて、何かが引っかかった。ここまで綿密に事を進めてきた仁王くんが、押しつけられたとはいえ、あのめんどくさかった真田くんを素直に引き受けるだろうか? 「むしろ、自分の役に立つと思ったから、この件に関わったのでは……?」 ――そう言った時の仁王くんの笑顔ときたら。 心からの喜びに邪悪さを織り交ぜるという、それは絶妙なものでした。 うわー、当たっちゃった。 「おかげで、のことがいろいろ知れた。真田のおかげってのは不本意じゃが、あいつには感謝せんといかんのう」 「ちょっと待って。わたし別に、つき合うとか言ってないよ?」 「なら、そう言うまで、全力でアプローチするだけじゃ」 握った手に、グッと力を込められる。 今わたしは、ものすごい相手に、ものすごい勝負を挑まれた。 脳内で、魔王の絵をバックにした勇者が、「俺たちの戦いはこれからだ!」って言ってる絵が浮かんだけど、それってどうなの? この戦い、無事に決着つくんでしょうね? でも正直、今から負け戦の気配を、濃厚に感じてる。 彼になら負けてもいいと思ってることがそもそも問題なんだけど、一番気に入らないのは、それを察したらしい仁王くんがやたら笑顔でいることよ。 自分の思い通りになったと思われるのが、すごくすごく気に入らない。 だから、たとえ力及ばなくても、全力で抗ってやるんだからね! −END−
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